ドーナツの穴を見るなと前に書きましたが、田村隆一は「村の暗黒」(新年の手紙、1975)の中で、

「・・・見えないものを見るのが 詩人の仕事なら

人間の夏は 群小詩人にとって地獄の季節だ・・・」

と書きました。

「詩人のノート」というエッセイは素晴らしいですが、「青いライオンと金色のウイスキー」も書いています。

この詩を引用したのは、精神科医の中には、見えないものを見たいという願望が潜んでいるからです。言うまでもなく、私は「群小」です。

ドラッカーは「良き意図を詰め込みすぎないこと」と言いましたが、「専門家は、リソースが無限だという前提で、素晴らしいこと、正しいことを提案する」傾向があると、ある精神科医も指摘しています。理想と現実のギャップに悩みながら、我々は臨床を頑張っている訳です。

「開業日記―私が這っている精神医療の道」を書かれた神戸の生村吾郎先生(ペンネーム;赤石本二)は今年、亡くなられました。本の中で街角の診療所の様子が活写されています。詩心もありますが、重く響くブルースのような文章です。