ビジョンについては福原麟太郎も、「目に見えるもの」、客観的に存在するのではなく、この世に存在しなくて目に見えるものことだといっています。欧米人の方が視覚的、映像的喚起力がすぐれているという説があります。

こころの医療センターのビジョンとしては、認知症問題、身体合併症問などが浮かび上がってきます。しかし、いずれも周囲の医療機関と連携しなければ成立しません。さらに10年以上先を考えると、精神科病院という形態が古びてしまうかもしれません。

もう一つは、病院改築と大幅な減床のために生じた経営的問題です。減価償却費の重荷は大きいです。改築のために読んだ「建築が病院を健院に変える」の中には、欧米では病院建設費用を医療費でまかなうという発想はないと書かれていました。また壊れるまで待つのではなく、常に前向きの補修をしている、つまりいつもどこかで工事をしているといいます。いずれにしろビジョンについても、ひらかれた議論をする必要があります。

電子カルテ導入については苦労の最中ですが、医療情報の共有化・ネットワーク化は将来的には強力な武器なので避けて通れません。取り組んでいるうちに、だんだん限界も見えてきました。電子カルテですべての仕事ができる訳がないので、今まで通り、人による作業も必要です。しかしそれを「つなぎ」と考えるのか「本来」の仕事と考えるかで、だいぶ立場が違います。たとえば、有名な亀田メディカルセンターでは自動再来機をわざと取り入れず、職員によるコンシェルジェを大事にしています。

救急医療問題のために総合病院を訪問した際に、現場の医師から電子カルテ入力が得意な若手スタッフは語彙がなくて困る、一方、語彙の多いベテラン職員は入力が苦手であるという鋭い指摘を聞きました。臨床的な能力と電子カルテを上手に結びつける必要がありそうです。入力の得手不得手による差別が起こらないように気をつけましょう。ステップ研修も必要になります。