年末にあちこちから年男のエッセイを求められていましたが、忙しさから忘れてしまいました。12年前には「中年力」について書いたので、今度は「老人力」というテーマになるのでしょうか? 藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」では、40代に家督を息子に譲り隠居して「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」と日記をしたためるのですが、現代ではそうもいきません。人間ドックでは肥満以外は異常なしと診断されたので、引き続き頑張って働きます。

それでも本屋の店先にならんでいた「HOSHINO DIARY」を買い求めて、4行ずつ書きはじめました。今日はアラスカ氷河の写真の次のページでした。星野道夫はオーロラを求めて、マイナス40度の氷河に1か月もキャンプします。一晩で食料品のすべてが凍り、卵にひびが入り石のようになるといいます。当然ながら凍傷になり、やっと一日だけ恐怖の中で全天にひろがるオーロラを撮影できました。思考力も鈍ってしまう寒さの中で、ただ決定的な瞬間を待ち続けるということは並大抵ではありません。

自分を振り返ると、待つことが昔より苦手になったと感じます。先を読んで発言したつもりが、単に前に言ったことの繰り返しだと気づくとぞっとします。相手が話したくなるように面白そうに聞く努力が必要です。先日、短いケースレポートを書いて気がついたのですが、臨床は失敗の連続です。浜田晋先生は「どこまで正しいのかと迷い続けるのが、精神科の日常臨床です」と述べましたが、凡人はその下を行きます。早く間違いに気がつくには、どうしたら良いかと考えたほうが良さそうです。

入院中のアルコール依存症の患者様が、集団の中で他人の話を聞いたり、自分の手で書いたりすることの大切さを話していました。パソコンを打つのとは違うといいます。手書きに戻ることは出来ませんが、手を止めて話を聞く時間をつくるようにと私も実験中です。

そうはいっても、外来日に一日中パソコンに向かっていると、目から頭の芯がジーンとしびれてきます。やはり医療クラークの力を借りるしか方法はありません。ほかには、ぬるめのジェットバスに長くつかるというリラックス法もあります。