早いものでもう師走です。この言葉を聞くと、教師が走るのか、医師が走るのかとつい連想します。今年は、新病院の2年目、電子カルテの1年目でした。準備から入れると、もっと長く職員みんなで走り続けています。12月に入っても、研究会や講演会が相次ぎました。暮れになってもこんなに勉強しているのは日本人だけではないでしょうか?

15日には、三重県から猪野亞朗先生に来ていただきました。県立高茶屋病院在職中に見学にうかがった時は、お話の最中に何度もポケットベル(懐かしい!)が鳴りだしました。あの頃は忙しすぎて「死ぬかと思った」と言います。現在は、病院を辞めて、アルコール依存症治療のスペシャリストとして全国を飛びまわっています。三重県のユニークな点は精神医療と一般医療とのネットワークがあることです。長野県も見習いたいところです。また、アルコール関連問題基本法の制定に向けて運動を繰り広げています。アルコール飲料による税収よりも、損失の方が3倍も大きいのです。

講演では、家族システムへの介入方法として、CRAFT(community reinforcement and family training)を紹介されました。家族が安全感を得る、飲酒への対処の仕方、飲酒なしで楽しむ人生、患者とのコミュニケーション技術、患者がシラフの時の家族の行動、家族のストレス減少、患者に受診を勧める時期について説明されました。アルコール依存症治療では、昔は「どん底体験」により否認を打ち破るような極端なイメージがありましたが、現在では随分洗練されています。治療者も、患者と家族にはさまれて「酒をやめるかどうか」と論争するのでなく、家族システムを見る目が必要です。

来年はどんな年になるのでしょうか?病院の毎日をみていると、「一難去ってまた一難」と思ってしまいます。しかし、作家のなだいなだはエッセイの中で、「オプティミスト」(optimist)ではなく「オポチュニスト」(opportunist)を生き方として推薦しています。後者は、ふつうは便宜主義や日和見主義と悪い意味に訳されるのですが、あえて積極的にとらえています。opportuneは、「好都合の、時宜を得た、適切な」と訳されるのに、名詞にするとどうして悪い意味になるのでしょうか? まずはリフレッシュ休暇を取りたいと思います。