8月の全国自治体病院協議会精神科特別部会総会と、文化の日の開院60周年記念式典・病院祭という今年度の二大行事を無事に開催することが出来てホッとしています。

特別部会のテーマは「精神科医療の倫理~あなたの届くところに~」として、久しぶりに児童思春期医療のシンポジウムや特別講演を行いました。発達障害は成年になっても支援が必要です。倫理問題を取りあげるのは初めてでしたが、隔離拘束から始まって、地域に展開する多職種チーム医療において当事者中心や職種間の意見の相違にどう対処するかまで幅広く話し合いました。キーワードは「もやもや」でした。近年は患者さんや家族から医療への要求水準が上がっていると感じます。武井麻子先生を招いて、「ひと相手の仕事はなぜ疲れるかー組織と個人の間でー」として感情労働の視点から話していただきましたが、看護部会だったので聞くことが出来ず個人的には残念でした。

60周年記念で、直木賞作家 辻村深月先生とのトークショーを行いました。始まる前は私自身が緊張していましたが、高柳カヨ子先生(伊那神経科病院)の上手な司会により無事に終了することが出来て良かったです。小説の中で母娘関係や特別養子縁組などの家族の問題を深く捉えられていて、作家の想像力はすごいと感心しました。また機会があれば、精神科に関係した異業種の方の話を聞いてみたいです。

新病院になり、ますます地域や他の医療機関からの期待は強くなっています。その中からすぐに出来そうなこと、外部の協力を得なければ出来ないこと、長期的な戦略が必要なこと、あるいは出来そうにないことを分類して取り組まなければなりません。たとえば、先日も病院運営協議会に参加した当事者代表から、「外来に多い40代の統合失調症患者の将来を考えた援助をしてほしい」との意見が出されました。外来満足度調査だけで安心してはいられません。

さて来年11月3、4日には日本病院地域精神医学会総会を長野県松本市で開催します。当事者や家族も参加するユニークな学会の丁度60回目になるので、「ひらかれた精神保健医療福祉」の伝統と未来について語り合いたいです。自分が若い頃には学会の議論と病院の臨床との間に乖離を感じる瞬間もありましたが、振り返ると、長い射程をもって想像力を働かすことがとても大事です。