皆さんは、覚せい剤や大麻などの違法薬物を使ったことや、薬物依存症の人と会ったことはありますか?おそらく、「ない」と答える人が多いのではないかと思います。所持しているだけでも違法ですので、実物を見たことすらない人もいるでしょう。
では、皆さんは薬物乱用防止のポスターや標語を見たことはありますか?こちらの方が、「ある」と答える人が多いのではないかと思います。「やめておこう…」と思わせるような、なんとも恐ろしい絵や、「人間をやめるのか」といったショッキングな標語が描かれています。しかし、実際に違法薬物に関する物事に触れたことがなければ、ある程度想像を膨らませて作るため、誤解や偏見を招く表現も起こりえます。
まず、「薬物依存症の人は、顔色が悪く不健康な見た目」というイメージは偏見です。むしろ、外見に気を遣い、おしゃれで清潔感のある人も多いです。また、違法薬物を一度使っただけでは依存症になりません。中には繰り返し使ってしまう人もいますが、「快楽の享受」ではなく、「苦痛の緩和」のために繰り返してしまうのです。傷つき、苦しみを抱えながらも生きるために繰り返し使い、コントロールできなくなってしまう―そういう人もいるということです。
違法薬物なので所持や使用が公になれば逮捕されますが、薬物依存症は説教をしても罰則を科しても回復には向かいません。回復のためには、かけがえのない人間として尊重され、人とつながり、人に癒され、安心できる安全な環境が必要です。 (作業療法士)