この度、第9回関東甲信越アルコール関連問題学会長野大会を、長野県立こころの医療センターが担当し、大会長を務めさせていただくことを、心より光栄に存じます。
 これまで本学会の活動を支えてこられた諸先輩方、そして日頃よりアルコール関連問題をはじめ、さまざまなアディクション課題の解決にご尽力くださっている多職種の皆さま、実際にアディクション問題から回復にむけて日夜努力されている当事者の皆さま、ご家族さまに、深く敬意を表し、心から感謝申し上げます。
 長野大会は2026年3月8日(日)、歴史と文化の薫り高い長野県松本市を会場に開催いたします。関東甲信越の広範な地域から多くの皆さまをお迎えし、実りある学びと交流の場となるよう、鋭意準備を進めております。

 本大会のテーマは「寄り道しながら、いっしょに歩きませんか?」といたしました。
 依存症からの回復は、決して一本の直線的な道ではありません。途中で立ち止まったり、挫折を経験したり、振り出しに戻ったり、時には別の道へ「寄り道」することもあります。それでも少しずつ前進していく――その人間的で複雑なプロセスを、私たちは否定せず尊重し、忍耐強く伴走する柔軟な姿勢が求められます。
 また、このテーマは「支援者」である私たち自身へのメッセージでもあります。精神科医療、地域保健、福祉、司法、自助グループなど、多岐にわたる専門職が関わるアディクション分野において、私たちは時に自らの専門性や方法論に固執しがちです。しかし、多様な課題に対応するためには、互いの専門性を尊重しつつ垣根を越え、それぞれの実践の「寄り道」や工夫を分かち合い、共に歩む協力関係が不可欠です。本大会が、支援者同士が専門分野の枠を超えて気軽に語り合い、連携を深める「寄り道」の機会となることを願っております。
 本大会は昨年度に引き続き、完全対面形式での開催を予定しております。コロナ禍を経て改めて、対面でのコミュニケーションが持つ力の大きさを再認識したからです。画面越しでは得られない熱量ある議論や、休憩時間・昼食時の何気ない雑談から生まれる新たな気づきや連携こそが、本学会の最も重要な価値であると考えております。

 プログラムでは、アルコール関連問題を深掘りする特別講演や、長野県ならではの地域課題と取り組みに焦点を当てたシンポジウムを企画しております。
 さらに恒例企画である「各都県現状報告とトピックス」を、「こんな寄り道、あんな寄り道」と題して実施いたします。関東甲信越の10都県それぞれの地域特性に基づいた取り組みや課題を共有し、臨床や地域活動に活かせるヒントを持ち帰っていただけるよう工夫を凝らしてまいります。

 開催地の松本市は、北アルプスの雄大な山々に抱かれた緑豊かな都市です。国宝松本城を核とした歴史的な街並みが残り、草間彌生氏の作品で知られる松本市美術館や、毎年8月に開催されるセイジ・オザワ 松本フェスティバルなど、芸術文化も息づいています。
 3月上旬の信州はまだ寒さが残りますが、その分空気は澄み、松本城の漆黒の姿がひときわ美しく映える季節です。学会での学びを深めるとともに、松本の景観や信州の豊かな食文化もぜひお楽しみいただき、心身ともにリフレッシュしていただければ幸いです。

 本大会が、アルコール関連問題に携わるすべての関係者にとって、学びと再会を喜び合う「寄り道」となり、今後の連携強化に向けた新たな一歩となることを願っております。
 多数の皆さまのご参加と、貴重なディスカッションを心より期待しております。松本でお会いできる日を楽しみにしております。

第9回 関東甲信越アルコール関連問題学会
長野大会 大会長

犬塚伸

地方独立行政法人長野県立病院機構
長野県立こころの医療センター駒ヶ根 副院長

2025年12月吉日