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摂食障害とは、こころとからだの健康を害する異常な食行動を特徴とする精神疾患です。拒食になる神経性やせ症、回避・制限性食物摂取症と過食になる神経性過食症、過食性障害に分類されます。
ここでは主に神経性やせ症について説明します。神経性やせ症は、体重が増えることに強い恐怖を感じ歪んだボディーイメージにとらわれ、極端に食事を制限することによって著しく体重が減少するのが特徴です。
発症は10~30才代の若い女性に多く、ピークは 15-19歳、欧米の統計では思春期女子の0.5-1.0%とするデータがあります。しかし年令、性別にかかわらず全ての人がかかりうる病気です。
神経性やせ症は、低栄養による深刻な身体合併症を引き起こし認知機能にも影響します。精神科疾患の中で自殺率、死亡率の最も高い疾患の一つです。回復に長く時間がかかり再発が多く一部は慢性化します。年齢が若く早期に治療を始めた方が回復率は高くなります。

症状

病気自体の症状と低栄養状態が引き起こす症状があります。

病的な思考

  • 体重増加への強い恐怖心
  • 自分の体重と体型を現実的に評価できない。(ボディーイメージのゆがみ)
  • 食事、食べ物、カロリーに思考が占領されてしまう

病的な行動

  • 食べ物の嗜好、食べ方が変わる
  • 過度にエネルギーを使う運動をする。座れない、背もたれに寄りかかれない、寒くても薄着で窓を開けておく。
  • 意図的に嘔吐する。下剤、ダイエットサプリを使用する。(たいていは隠れて行う。)

低栄養による身体合併症

  • 倦怠感、脱力、ふらつき
  • 脈拍数の減少、不整脈、血圧低下などの循環器への影響。
  • 造血機能低下による貧血や白血球減少
  • 低血糖による意識障害、起立性低血圧による意識消失
  • 月経不順、無月経
  • 骨粗しょう症
  • ドライスキン、髪質の変化、抜け毛
  • 便秘

原因

遺伝子、脳を含めた生物的要因、病前性格を含めた心理的要因、環境を含めた社会的要因が複雑に絡み合って生じる病気であり、特定の原因によるものではないと考えられています。

診断

  • カロリー摂取を制限して正常下限を下回る体重
  • 体重が増えることや太ることに対する強い恐怖心
  • 自分の体重や体型に対するゆがんだ考え、あるいは現実的に評価できない。

神経性やせ症と診断するには上の3つの基準を満たすことが必要です。しかしすべてを満たさなくても重度の摂食障害である可能性は否定できません。顕著な体重減少があるものの肥満恐怖やボディーイメージのゆがみがない回避・制限性食物摂取症という病態があります。
①匂い、味、食感などの感覚に基づき回避するタイプ、
②食べ物がのどに詰まる、食物でアナフィラキシーショックを起こしたり、人前で嘔吐したりした外傷体験が影響するタイプ、
③食べること、食物に興味がなくもともと摂取量が少ないタイプ、3つのタイプがあります。

治療

正常な食行動で体重が維持できるようになることが治療の目的です。摂食障害症状が完全に消失するまでには長い治療期間を要することが知られています。
入院治療の必要性は、現在の体重、体重減少の速さ、身体合併症、精神症状の程度から判断します。身体的な安定化、栄養回復、摂食行動の正常化、心理社会的安定化など集学的な治療が必要となります。

当院の摂食障害プログラム・治療

当院では、主に小中学生を対象にした児童病棟で神経性やせ症の入院治療を行っています。
エビデンスを重視し、治療全般にFBT*の考え方を取り入れ、栄養の評価と治療にはJunior MARSIPAN**を参考にし、行動療法と組み合わせたステップアップ表を独自に作成し治療指針としています。また当院には医師、管理栄養士、薬剤師、看護師等からなるNST(栄養サポートチーム)があり栄養、身体合併症の評価と治療をサポートしています。
*FBT (Family Based Treatment)は、モーズレイセラピーとも呼ばれ、児童思春期神経性やせ症の治療に最もエビデンスがある心理家族療法。18歳以下、罹病期間3年以内、身体的に安定している神経性やせ症の外来治療である。

*Junior MARSIPAN (Management of Really Sick Patients with Anorexia Nervosa under 18) は18歳以下重症神経性やせ症の英国治療ガイドライン。