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人は、いろいろなことをきっかけにこころの病気を患います。家族や友人、職場や学校、近所などあなたの周りにもいるかもしれません。こころの病気を抱える人に“こんな時、どう言えばいいのだろう、、、”、“どう接したらいいのだろう、、、”と悩んだことはありませんか?

こころの病気には様々な症状があり、中には共感しにくいものもあります。自分が体験していないことを理解するのはなかなか難しいものです。ただ、“その人のつらさ、苦しさ”はどうでしょうか。“いつもと違う、その人らしくない行動をしている”、“普通では考えられないことを言っている”という時、その人は何かつらいこと、しんどいことを抱えているに違いありません。

こころの病気を抱える人を支えるためのヒントをいくつかご紹介します。

接し方のヒント

~こころの病気を抱える人が近くにいたら(しんどさを受容するということ)~

受容のコツ

まずは“どんなことがつらいのか”、“しんどさを分かろうとすること(受容する)”が大切です。時間をとって、ゆっくり本人の話を聴いてみましょう。4つのポイントを紹介します。

  1. 身体の位置
    相手の横に並び、視線の高さが相手と同じくらい、あるいは相手よりも低くなるような位置を心がけましょう。
  2. 復唱と相づち
    相手の話したことの一部をそのまま繰り返します(「迷惑をかける自分は生きていてはいけないと思うんだね」など)。また、途中で話を続けるように促す言葉(「それで?」など)もおすすめです。
  3. 話の腰を折らない
    しんどさがわかるまでは、自分の気持ちや意見を抑えて、聴き続けることに集中しましょう。話の内容を批判、評価することは避けます。
  4. しんどさがわかったことを伝える
    相手の言葉に合わせながら、「しんどいですね、、、」と静かに伝えましょう。“この人はわかってくれる、支えてくれる人”と相手が感じれば、こちらの言葉を聞き入れる耳をもってもらいやすくなります。

信じがたいことを言われたとき

統合失調症には、幻聴や妄想という症状があります。「自分のことを悪く言う声が聞こえる」、「盗聴器で聞かれている」、「周りの人が自分を陥れようとしている」といったものです。「そんなことないよ」、「気にしすぎだよ」、「あなたの思い込みだから」と言ってしまいがちですが、本人は否定され、わかってもらえない苦しさが残り、不信感にもつながります。

ここでのポイントは「否定しない」ということです。人は自分が感じたことを事実であると信じます。キッチンに白い粉末が2種類あったとき、甘いと感じれば砂糖、しょっぱいと感じれば塩だと信じることと同じです。「自分の悪口が聞こえてくる。噂されている」と言われたら、「私には聞こえないけれど、そんな声が聞こえてくれば嫌だよね、しんどいよね」と答えてみましょう。そこから“何がしんどいのか”をもう少し聴いてみましょう。

自分自身を大切に

相手のつらさに寄り添うことは、多くのエネルギーを使います。あなた自身が疲れてしまうこともあります。自分が休める時間、楽しめる時間をできるだけ大切にしながら、医療や福祉に助けを求めましょう。

当院では、様々な専門職による家族向けの学習会を開催しています。説明の後には、家族同士で苦しさなどを気軽に話し合える時間もあります。お気軽にご参加ください。

医療機関への受診を進めたいとき

一番のおすすめは、心配している気持ちを伝えることです。こころの病気には、不眠、だるさ、痛み、肩こり、食欲不振からの体重減少など、なんらかの身体症状が出てきます。心配の材料を見つけ出しましょう。「眠れていないし、神経をいっぱい使って疲れているように見える。このままでは体がまいってしまうよ。病院にいこう」とお願いしましょう。

本人の受診が難しい場合は、「私だったらとっくにまいっている。心配だから、専門家の意見を聞いてくる」と伝え、医療や福祉の相談窓口に相談することも有効です。

家や職場での過ごし方のヒント

おすすめは、「できること、得意な方法を探す」ということです。病気が原因で、できなくなったことを焦って練習するよりも、“ちょっと頑張ったらできる、小さな成功体験”を積み重ねます。

本人がしたいことはもちろんですが、本人が得意なことで簡単に頼めそうなことを提案してみることもおすすめです。どんな些細なことでも感謝を伝え、「人のために役に立つ喜び」を共有してみましょう。

病状が悪いときは「無理をさせない」、ある程度良くなり再発予防を目指すときには「本人の頑張りを支える」という意識が大切です。

~相手を傷つけないための工夫(誰にでも使える声かけ)~

行動を変えてほしいとき

相手の行動でイライラしたり、悲しくなったりすることはありませんか。何度も続くと「あなたはいつも手伝ってくれない」「全然だめね」と非難してしまいがちですが、相手は傷つきます。

ポイントは“今変えてほしいことだけ頼む”ということです。相手が実行してくれた時は、小さなことでも「ありがとう。助かったよ」と伝えてみましょう。周囲からの感謝の言葉は、やる気に繋がります。

何かを伝えたいとき

相手と意見が食い違ったとき、なんとか説得したい時は、つい感情的になり相手を責めてしまいやすいものです。「私は○○と思う」と自分を主語にして、気持ちを伝えましょう。

参考:田原昭夫「新版 こころを病む人を支えるコツ」、解放出版社、2007