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神経発達症は、これまで発達障害と呼ばれていたものです。神経発達症は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、乳幼児期から認知(物ごとのとらえ方)や行動面に特徴がある状態(通常「発達特性」と呼ぶ)です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。

神経発達症があっても、本人や家族・周囲の人が発達特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困りごとを軽減させたりすることができます。

神経発達症には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、学習症(学習障害)などが含まれます。同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの神経発達症を併せ持ったりすることもあります。

自閉スペクトラム症(ASD)とは

コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやりとりをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。また、特定のことに強い関心をもっていたり、こだわりが強かったりします。また、感覚の過敏さを持ち合わせている場合もあります。

特性は年代ごとに変化が見られます。乳幼児期は目を合わせない、ほかの子どもに関心をしめさない、こだわりが強いといった様子がみられます。保育所や幼稚園に入り、一人遊びが多く集団活動が苦手なことや、かんしゃくを起こすことが多いことで気づかれることもあります。就学以降の特徴としては、会話では自分の興味のあることばかりを話し、相互的に言葉をやりとりすることが難しい場合もあります。また、電車、ミニカーやビデオなど、自分の興味のあることには、毎日何時間でも熱中することがあります。初めてのことや決まっていたことが変更されることは苦手で、環境になじむのに時間がかかったり、偏食が強かったりすることもあります。

思春期や青年期になると、微妙な対人スキルを求められる場面や、学習面で多様な能力を総合的に求められる機会でのつまずきが増えます。就職してから仕事が臨機応変にこなせないことや対人関係などに悩んだり、家庭生活や子育ての悩みを抱え、病院を訪れる人もいます。不安やうつなどの精神的不調を伴うこともあります。

注意欠如多動症(ADHD)とは

発達年齢に比べて、動きが多く落ち着きがない(多動)、待てない(衝動性)、注意が持続しにくい、ケアレスミスが多い、注意が散りやすい(不注意)といった特性があります。多動性−衝動性と不注意の両方が認められる場合も、いずれか一方が認められる場合もあります。

多動-衝動性は、落ち着きがない、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、しゃべりすぎる、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込む、などで認められます。不注意の症状は、学校の勉強でミスが多い、課題や遊びなどに集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやりとげない、課題や作業の段取りが苦手、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や失し物が多い、気が散りやすい、などがあります。

思春期・青年期になると、多動-衝動性は軽減することが多いとされていますが、そわそわとして落ち着かない、他のことを考えてしまう、計画的に物事を進められないなどの特性は引き続き観られます。また、不安や気分の落ち込みなどの精神的な不調を伴うこともあります。

学習症(LD)とは

全般的な知的発達には問題がないのに、特定の学習能力、すなわち、読む(読字障害)、書く(書字障害)、計算する(算数障害)のみに困難が認められる状態をいいます。全般的な遅れがないために、しばしば、本人が怠けていると思われ、合理的配慮を受けられないことが起こりがちです。

当院の子どものこころ診療センターでの治療

外来

  1. 多職種初診
    子どものこころの問題を解決するためには、アセスメントが重要となります。
    そのために当院では、初診の段階で90分をかけて、児童精神科医、看護師、公認心理師、ソーシャルワーカーが各々の専門性から患者さんと患者さんを取り巻く環境を評価し、適切な治療の方向性を検討します。
  2. 初診以降の流れ
    公認心理師と相談しながら、知能検査、性格検査を施行します。診察と検査などを総合して治療方針を決定します。主治医は、神経発達症の主症状と関連する問題について、子どもの気持ちを受け止め、それを子どもが受け止めやすい形で投げ返す作業を通じて、症状の軽減と子どもの成長を促進します。また親御さんには、神経発達症の理解を伝え、適切な関わり方についてアドバイスしていきます。
  3. 多職種による治療
    必要に応じて心理面接を行い、子どもひとりひとりの状況に合わせて主訴の改善を目指して一緒に考えていきます。
    親御さんには、ペアレントトレーニングなどご家族対象のプログラムの提供もあり、子どものみならず、ご家族の心理的サポートの相談もお受けしています。
    集団治療が適応の不登校や神経発達症の子どもさんは、デイケアへ導入することもあり、そこでのプログラムに参加してもらいます。
    また、PSWを介して学校と情報を共有したり、支援会議を開催し、合理的配慮を含む適切な関わり方について一緒に検討します。

入院

  1. 安心安全な場所と関係の提供
    入院が必要になるのは、自傷や暴力、学校や対人関係からの引きこもり、抑うつ気分や希死念慮などの2次障害が対象となります。これまでの生育過程で何らかのこころの傷つきを体験している子どもがほとんどで、これは統合失調症や気分障害が主となる大人の病棟との大きな違いです。
  2. 気持ちへの寄り添い
    入院は、衣食住が保証され、大人との安全で穏やかな関係が提供されます。そうした環境下でも、こころの問題は必ず表面化してきます。そうした問題が生じたときに、今の気持ちに寄り添い、過去の傷つきを共有してもらう体験が子どものこころを癒します。
  3. アタッチメント(大人との絆)の修復
    不適切な養育を受けた子どもは、困難に陥った時、怒られたり、見放されるのが怖くて大人を頼ることができません。まず遊びや作業を通して子どもと時間と気持ちを共有し、信頼関係を築きます。そのうえで、困難に陥った時に大人に頼ることで不安と問題を乗り越える体験を重ねてもらいます。
  4. 親を支える
    不適切な養育を行う親にも子ども時代があり、自分の親から不適切な養育を受けたかもしれません。あるいは、親にも神経発達症の特性があるかもしれません。そんな親が、子どもを受け入れられるように、勉強会を開いたり、個別の面談で支えていきます。
  5. 学校・地域との協働
    退院後を想定し、支援会議を開きます。その親子の理解を共有し、試験登校のなかで、学校の先生に支援してもらいます。大切なことはアタッチメントの修復の継続で、問題が生じたときに、大人に頼れるように、キーパーソンとなる人と場所を整えてもらいます。

公認心理師の役割

子どもの状態を把握するとともに、主訴の背景の理解、成長発達の糸口を探るために心理臨床的アセスメントを行います。それらアセスメントに基づき、多職種チームで検討し、必要に応じて心理面接を導入します。心理面接の内容は、CBT、支持的精神療法、クライシスプランの作成などさまざまですが、病棟ではできない話や思いを子どもから聴くことを大切にしています。個人心理面接以外にも、似たような課題をもつ子どもが複数名いたり、集団場面が課題となる子どもがいる場合には、集団プログラムとして企画し提供することもあります。